日本工芸会近畿支部会員紹介

小倉 淳史おぐら あつし [分野]染織

小倉家は、京都の染織工芸を代表する家で 百三十年以上の歴史がございます。
初代 小倉萬次郎(まんじろう)は、明治 大正の友禅界を代表する一人として永く活躍しました。
二代目、三代目は優れた腕を持ちながら 短命に過ぎましたが、小倉淳史の父 建亮(けんすけ)は、萬次郎から友禅を学び四代目となりました。
しかし それだけに飽きたらず、独自の作風を成す為 義母の実家(絞りの岡尾家)で絞りを学び 遂に「絞りの小倉」 「辻が花の建亮」として名を成しました。

淳史(あつし)は建亮の長男として生まれ、子供の頃から 身近に着物や筆 染料のある生活をし、14歳にして 最初の染色作品を制作しました。

そして30歳代から 重要文化財を含む染織文化財の復元、修理になんども携わり経験を積みました。 又 日本伝統工芸展には、毎年 最新の絞り染作品を出品し高い評価を受け、さらに 現代女性が着用して美しい着物の制作を日々続けています。小倉淳史は、室町時代の絞り染から現代の染色作品にいたるまで 幅広い知識と技術をもつ、 日本で唯一人といえる染色作家になりました。

小倉淳史・工房WEBサイト

 

辻が花とは

「辻が花」とは、室町時代中期から江戸時代初期までの間に制作された 絞り染の着物(小袖)の呼び名です。
初めは麻の生地に簡単な模様を絞り、染めた単色の着物でした。やがて 色ごとに 絞り、染めを繰り返す方法で、地の色と花や葉をそれぞれ別の色にする、多色染め着物になり より複雑な模様へと進展します。

また麻以外に絹にも染めるようになり、絞って白く染め残った花や葉の 花びら1枚ごと、葉脈1本ごと、虫の食み痕まで 墨で細く描き、隈どりぼかしを加えて、おおらかな絞り染のなかに繊細な表現が加わりました。

 

美しい事に変わりはありません。

そして室町時代後期(安土桃山時代)になると、多色絞り模様に金箔、銀箔や刺繍がほどこされ 豪華な着物として姿を整えました。
それまで女性や若衆(少年)の着物として用いられた「辻が花」は、成人男性も着用するようになり、戦国武将達の小袖、羽織、胴服(どうぶく)として数多く制作されました。

ちなみに現存する品として、「上杉謙信」 「豊臣秀吉」 「徳川家康」などの遺品があり、「武田信玄」は肖像画のなかに着姿を見ることができます。
女性では、織田信長の妹「お市」も肖像画のなかに その姿が見られます。当然「織田信長」も着ていたはずですし、お市の娘「茶々」「初」「江」や「細川ガラシャ」などこの時代の人は 皆「辻が花」を着ていました。やがて その後 徳川家康が亡くなった頃「辻が花」は、衣裳の表舞台から 足早に去っていきます。

しかしながら、「辻が花は絞り染ではない。室町時代にあった別の染め物である。」と考える人達もいます。今も続く研究がさらに進展すると、本来の辻が花がどのような染め物なのか解明される日がくると思います。そして、どのような呼び名であっても、この時代の絞り染の美しい事に変わりはありません。

作品紹介

  • 絞り染訪問着 「冬陽さす」
  • 絞り染訪問着 「雪晴れ、庄川」
  • 辻が花訪問着 「若菜」
  • 辻が花袋帯 「白頂紅雲」
  • 辻が花名古屋帯 「茜雲」
  • 風呂先屏風「庭」

作品をもっとみる

プロフィール

1946
京都生まれ
1975
第22回 日本伝統工芸展 初入選
1984
NHKの依頼により国友家所蔵、徳川家康の小袖
「亀甲重ね模様辻が花」を吉岡常雄氏と共に復元
京都府主催 「和の6人展」出品
1986
個展 「絞り一化生」 大阪:高宮画廊
個展 「絞り一化生2」 東京:千疋屋画廊
1988
NHKの依頼により徳川美術館所蔵、 徳川家康の小袖
「 葵紋散し辻が花 」、「 槍梅模様辻が花 」を復元
1989
日本工芸会 正会員に認定される
パリ展「美は東方より」(染技連)
1991
個展 「墨色の情景」 東京:赤坂遊ギャラリー
1993
個展 「四季.彩」 東京:赤坂遊ギャラリー
浅井長政婦人(お市の方)小袖
「 段模様肩裾辻が花 」 画中資料を、切畑健氏の指導により再元(染技連)
1996
個展 「身辺を彩る愛しき生命」 東京:赤坂遊ギャラリー
1998
京都国立博物館所蔵の小袖
「 藤棚に亀甲つなぎ肩裾模様辻が花 」の欠損部分を復元(染技連)
2001
「日本の絞り」小倉家一門展  ドイツ:ライス・ミュージアム
2004
CBC TVの依頼で徳川美術館所蔵、
徳川家康の羽折「 波にうさぎ模様辻が花 」を復元(染技連)
2005
関西学院大学の依頼で東福門院の小袖
「 立波網目に花丸模様絞り染 」を河上繁樹教授の指導により再元(染技連)
2006年には友禅史会所有の「 束熨斗模様振袖(重要文化財) 」の欠損部分を
山川暁氏の指導により復元(染技連)
2009年には島根県太田市 岩見銀山世界遺産センターの依頼により、
徳川家康の丁子文小袖(重要文化財)を河上繁樹教授(関西学院大学)の指導で復元(染技連)に取り組む
2007
NHK「美の壺」-File71・絞り染め-出演
2019
京都府指定無形文化財『絞り染』保持者に認定される。

受賞歴

1981
第2回 全国青年伝統工芸展 最高賞 受賞
1993
第30回 日本伝統工芸 染織展 日本工芸会賞 受賞
1997
第34回 日本伝統工芸染織展 日本経済新聞社賞 受賞
1998
紺綬褒章 受章
2003
第32回 日本伝統工芸近畿展 京都新聞社賞 受賞
2005
第39回 日本伝統工芸染織展 日本工芸会会長賞 受賞
2009
第43回 日本伝統工芸染織展 日本工芸会賞 受賞
2015
第49回日本伝統工芸染織展 文部科学大臣賞 受賞
2018
第65回日本伝統工芸展 文部科学大臣賞 受賞
2020
第54回 日本伝統工芸染織展 文部科学大臣賞 受賞

工房情報

工房名
小倉淳史・工房
WEBサイト
http://www.tsujigahana-ogura.com/
住所
〒604-0034
京都市中京区釜座通御池上る下松屋町
お問い合わせ先
075-221-6511