森田 崇夫もりた たかお [分野]木竹工
空を仰げばいつも和泉葛城山が見える町、貝塚で育ちました。和泉葛城山は、天然ブナ林が蘇生と枯渇を繰り返し、麓には葛が至る所に群生しています。山から流れる秬谷川と近木川の合流する三角州に、泉州屈指の名刹水間寺が鎮座しています。
幼少の頃は、樹木のことを白昼は緑が清々しく健やかですが、夜は枝葉がゆらゆら揺れる様子を幽玄で恐ろしく、その対照的な姿と雰囲気が神妙で生命体だと感じていました。材になると、肌触りや目にも優しく五感を満たしてくれます。自然に木工の仕事をするようになりました。これらの木の性質を生かして人を励ますものでありたいです。
心身の修行
修行として水間寺に参詣に走り三重塔を匝り、そこで創建当時の職人の姿を思うと組物を掛矢で組んだり、蛙股を廻し挽き鋸で透かし彫刻刀で造形していきます。本堂の軒下には立派な永代日(月)御膳〈写真のものは刳物〉が掛けてあり見所になっています。また、柱を前挽大鋸で上半身を後方に体重移動して縦挽きする様子が舟を櫂で漕ぎ出だすかのようです。そして、渓の深い近木川に沿って造られた水路を辿って行くと聖武天皇勅命により行基造成の天地を繋ぐ水瓶、永寿池があります。ここで逗まり正座して西日を想い描きます。
源氏物語の木工品
たとえば、久保惣記念美術館の源氏物語手鏡研究を見てみますと、土佐光吉の描いた大和絵は規律正しい風雅な宮廷生活です。調度品は儀式、遊戯などで用いられています。桐壺の加冠の儀で使われている曲彔(キョクロク)の肘掛は優美な曲線を描いています。絵合では、台盤の上に敷物と巻物を入れている櫃があり豪華なものです。仏壇や碁盤は、木目を描いていて歳月を感じます。等々木工品はたくさんあります。電光朝露、悲しいかな人間は儚い体でありますが、光、雲のごとくにして無碍なること虚空のごとし。光吉は描くことで浄土への道程を顕そうとしたのだろう。日々夜々行住坐臥にこの心を忘れずに創作して行きます。
作品紹介
- 欅拭漆盆 [第27回日本伝統工芸近畿展初入選]
- 欅拭漆扇面盛器 [第33回日本伝統工芸近畿展入選]
- 欅拭漆蓋付盛器 [第48回全関西美術展初入選]
- 欅拭漆菓子器 [第34回日本伝統工芸近畿展 (新人奨励賞)]
- 楢拭漆文机 [第30回日本伝統工芸近畿展]
プロフィール
- 1973
- 大阪府泉佐野市に生まれる
- 1994
- 浪速短期大学デザイン美術科彫塑専攻卒業
現、大阪芸術大学短期大学部 - 1996
- 岐阜県高山高等技能専門校木工工芸科修了
現、岐阜県木工芸術スクール - 1998
- 第27日本伝統工芸近畿展初入選
第8回伝統工芸木竹展初入選 - 1999
- 第14富嶽ビエンナーレ展初入選
根来塗研究会・漆器研究開発室作品展 和歌山県工業技術センター - 2002
- 第48回全関西美術展初入選
東西名作美術鑑賞会 大丸心斎橋店 - 2009
- CRIA展 京都芸術センター
- 2013
- 近鉄阿倍野店で初個展開催
- 2018
- 大阪大学エクステンション修了 芸術計画論演習・「記憶の劇場Ⅱ」
受賞歴
- 2001
- 第7回新美工芸会展初入選 (大阪府教育委員会賞)
- 2003
- 第9回新美工芸会展 (新美工芸会奨励賞)
- 2005
- 第11回新美工芸会展 (新美工芸会大賞)
第34回日本伝統工芸近畿展 (新人奨励賞) - 2007
- 第13回新美工芸会展 (新美工芸会奨励賞)
第36回日本伝統工芸近畿展 (松下幸之助記念賞) - 2009
- 第15回新美工芸会展 (大阪府教育委員会賞)
- 2010
- 第16回新美工芸会展 (新美工芸会賞)
- 2012
- 第18回新美工芸会展 (読売新聞大阪本社賞)
- 2014
- 第20回新美工芸会展 (新美工芸会奨励賞)
工房情報
- 工房名
- WEBサイト
- 住所
- 〒〒597-0105
大阪府貝塚市三ツ松2322-10 - お問い合わせ先
- TEL (072)446-7238 携帯電話 (090)4037-6214 e-mail: wood.morita.t@cosmos.ocn.ne.jp